先輩は無理やりな言い方だったけど、たぶん興味本位ではなくて、傷を心配してくれてのことだと思う。
「それでも、助かったことに変わりはないよ。自分でもこんな傷、ないものと思って生活していきたいくらいだから」
同情されるために傷を負ったわけではない。
「俺も……悪かった」
「え?」
カップを戸棚にしまった海里は、私から視線を逸らし、歯切れ悪く謝罪の言葉を口にした。
「その……見られたくないもの、色々見てしまって」
色々……。
それって、傷痕のことだけでなく、私の下着姿を見たことだろうか。
たちまち私の頬が沸騰しそうなほどの熱を持つ。
気まずげに黙りこくる海里へ、私は思い切って心の内を吐き出してみる。
「や……あの、あれは……妹の裸を見たとでも思って、忘れてください!」
「……は? 妹?」
「見て得するような体だったら良かったのですが……、全然違ってごめんなさい! お見苦しいものをお見せしました、失礼しますっ」
なぜか最後は敬語でまくし立て、呆然とする海里の前から姿を消そうと一歩足を踏み出した。