「あ、俺は優希奈さんと一緒に、この勝負を見守る役だから」

「そうなんだ」

「ほら、向こうのチームのお姫様が来たよ」


春馬君の視線の先には、二つの黒い影があった。


一つは、何度か見かけたことのある長い黒髪の男。

もう一つは、スラリと背の高い女の人──。



「あら、先客がいた。──あの子が龍臣の?」


大人っぽい顔立ちの女の人は片手をコートのポケットに入れ、空いた手で綺麗に巻かれた髪をいじりながら、品定めするように私を見ていた。


「──海里の女だって聞いてましたけど、違うんですかね」


黒髪の男が軽く首を傾げて、女の人の問いに答えた。


「こんばんは、樹莉(じゅり)さん、俊也(しゅんや)さん」


春馬君が立ち上がって二人へ挨拶をした。


「優希奈さんは、龍臣の女ですよ」

「なんだ、やっぱりな」

「でも……。さっき下で見たときは海里と仲良くしてたから、てっきり海里のかと思った」


樹莉さんという女の人は、相変わらずじろじろと私のことを眺めている。