茶褐色の真っ直ぐな髪と、隙なく整った顔立ちは相変わらず。

兄は私の後ろにいた二人に気づき、一瞬、鋭く眼つきを変えた。


「薫兄さん……お願いだから、私がここに来たことは言わないで。私、もう家に戻るつもりないから」

「……優希奈」


兄はつらそうに瞳を歪め、白い息を吐いた。


「俺は、ずっと待ってるから。優希奈が帰って来なくても。
いつか必ず、迎えに行く」


私達が家を離れるまで、兄はずっと私のことを見送っていた。




「あの人が優希奈さんのお兄さん、か」


兄の姿が見えなくなった頃、春馬君がぽつりと呟いた。


「何となく似てるね」

「……そう?」

「優しそうな雰囲気とか」



──ふと視線を感じて顔を向けると、海里が私を見ていて。


でも目が合うとすぐに視線を逸らし、どこかに電話をかけ始めていた。