食事が終わり、後片付けをしようとキッチンに立つと、海里が後ろからスポンジを取り上げ洗い物を始めてしまった。


捲り上げたシャツの袖。

そこから見える筋肉質な腕に、細長い三日月のような形をした傷跡があることに気づいた。



「明日って──喧嘩、するんでしょ?」

「別に、意味なく殴り合うわけじゃねぇよ。目的があって勝負をつけるんだ」

「目的……」

「あんたはただ黙って決着がつくのを待ってればいい」

「でも。大怪我したらどうするの?」

「なんだよ、心配してんのか」


海里は手を止めて、意地悪く私の顔を見た。

唇にはうっすらと微笑が乗っている。


「海里の心配なんかしてないよ。何となく、海里達が負けたら、私の居場所がなくなってしまいそうな気がして」

「──そうだな」


海里は一瞬目を伏せ、深刻そうな表情を見せた。

やっぱり私、用済みになって、また捨てられてしまうんだろうか。


洗い終わった食器を布巾で拭こうと思い、ラックへ手を伸ばしかけたとき──