今朝は春馬君は迎えに来なかったので、必然的に海里と二人きりで登校することになる。

校舎が近づき、私の歩みがどんどん遅くなっていった。


「どうした? 遅いぞ」

振り返る海里は、周りの様子を全然気にしていない模様。


「だって。みんな噂してるよ? 私達が一緒に登校してるって」


周囲からの視線が痛い。
遠巻きにじろじろと見られている気配がする。


「よっ、海里。いつの間に彼女できたんだよ!」


海里の肩を勢いよく叩き、からかってきたのは、同じクラスの小野寺君。

よく海里を含めて何人かで行動しているから、仲の良い友人なのだと思う。

赤茶の髪が特徴的で、クラスでもかなり目立っている方だ。


「俺の彼女じゃない。如月さんのだ」

「あー……なるほどね」


無愛想な海里の説明で納得したらしく、小野寺君は私のことを観察し始めた。


「如月さん、この子に決めたんだー? けど、いつもとタイプ違うよな」

「ああ、いつもはもっと美人系だ」


小野寺君の隣に並び、頷いたのは椎名君。

彼も同じクラスで、今日も両耳にたくさんのピアスを身につけている。

如月先輩の彼女がいつもは美人系……って、何となくけなされている気がする。


「これじゃ海里の好み…………ぐあっ」


言葉の途中で小野寺君がカラスの鳴き声みたいな変な声を上げた。

見ると海里が小野寺君の首に腕を回し、思い切り締め付けているところだった。


「お前さ、余計なこと言うなよ」

「は、はい」

「大丈夫……? 小野寺君」

「この二人、いつものことだから気にしないでいーよ」


椎名君がフォローすると、海里達はすぐにじゃれ合いをやめ、何事もなかったかのように歩き出した。


「仲がいいんだね」

私が笑うと海里はちらっと視線を向け、一瞬気恥ずかしそうな顔を見せた。


小野寺君の言いかけた“海里の好み”って何だろう……。

恋愛に興味がなさそうな彼が、どういうタイプが好きなのか。全然想像がつかなかった。