「そのままのお母さんのこと、愛してあげられなかった。
亡くなった母の代わりとしてしか……。
私こそ、被害者ぶって恨んでいるばかりで。お母さんの寂しさに気づいてあげられなかった」
それは、海里達と出会ってから気づいたことだった。
辛くて、自分のことしか考えられなくて、相手を思いやる気持ちを忘れていた。
「お母さんはよく、私達に思い出話をしていたの。特に、兄がピアノの練習をしていたとき。暁斗(あきと)もピアノが得意で、いつも聴かせてくれたって。……優しそうな顔をしてた。
アキトって、あなたのことだったんだね。離れていても、あなたのことを一番大切に想っていたみたい」
彼は眉を寄せ、不可解な表情で聞き返す。
「あの人が、俺の話を……? お前達といるときは、1ミリも思い出さないのかと思ってた」
呆然と彼は呟き、深く息をついた。
「離れていても、忘れてなんかいなかったんだよ。
今からでも遅くない、お母さんのそばにいてあげて」
「…………」
「お母さんの居場所、あなたが作ってあげればいい。寂しさを埋めて憎しみを消してあげれば、きっとまた……」



