「優希奈。先に行け」
海里が私を振り返り、出口へ促す。
けれど私はその場から動かなかった。
「待って、海里」
「……?」
ケイのそばを離れた私は、訝しげに眉をひそめた海里の隣に立つ。
「私、あなたに謝りたいことがあるの」
じっと見つめた先は、柱に寄りかかる影島の瞳。
「謝る……? 今さら何を」
灰色の髪の下から、一筋の血液がこめかみを伝って滴り落ちている。
それを拭うこともせず、影島は私を睨むように見返してきた。
「私達のこと──憎いんじゃなくて、最初はただ寂しかっただけなんでしょ?」
寂しさが、私と兄への憎しみに変わっただけ。
影島の憎々しげな鋭い眼に怯みそうになるけれど、そばに海里がいてくれたから平常心を取り戻せた。
「今まで、お母さんを縛って、苦しめてごめんなさい。
私は亡くなった母とあなたのお母さんを、気づかないうちに比べてた。
父も寂しくてあなたのお母さんを頼った。でも……あなたのお母さんは見抜いていたんだね」
床へ視線を落とした影島は無言で唇を噛みしめる。



