車が到着したのは、蒼生高の旧校舎。

西階段を最上階の4階まで上り、一番端の教室に連れ込まれた。

そして影島だけがすぐにまた教室を出ようとする。


「お前と相原薫の大切な物、全部消してきてやるよ」


その言い方が何か引っ掛かり、私は彼を呼び止めた。


「私と兄に、何か恨みがあるの?」

「恨みだと?」


始めに会ったときと同じ鋭い眼で、影島は私を睨みつけてくる。


「恨むどころじゃ足りない。お前らだけが幸せで、腹が立つんだよ。あの女は俺を捨てたのに、何でお前らは……」

「あの女って、まさか」

「そうだよ、お前達の母親だ。昔、家族4人で街を歩いているのを見かけたことがあったんだ。幸せそうだったよ、俺の元母親も」


影島が、あの人の本当の子ども……。


「俺の母親は父親からの暴力で離婚して。家を出て行った。
俺は祖父母に引き取られた。だからお前達だけが幸せな家庭でいるのが許せない」

「……」

「しかも最近は、俺の元母親を除け者にしてるとか。……せっかく掴んだ幸せだったのにな」


弁解の余地もないまま、ドアが閉まる。