門を出てすぐ、兄の携帯が鳴った。

電話に出ようと私の手を一瞬離した、その隙に。


兄の体は門の白い外壁に勢いよく叩きつけられていた。


雪の上に赤い飛沫が散る。


「お兄ちゃん……!」


思わず出した声が悲鳴のように空へ響き、後ろから誰かが私の肩を強引に引き寄せた。


見れば、唇を歪め苦く笑った影島がそこにいて──。

その背後には何人もの男達が控えている。


「無様だな、相原さん?」

「っ……、桜花を倒す手伝いをすると言っておきながら……裏切ったか」


苦しげな声を漏らした兄が、いつもの穏やかな雰囲気を消し、影島のことを睨み上げた。


「お互い、仲間だなんて思ったことがないでしょう」


雪の上に倒れた兄を見下ろし、影島は冷たく嘲笑った。


「旧校舎の地下にでも閉じ込めておけ」


部下の男達にそう告げ、影島は私を路肩に停まっていた車に乱暴に押し込んだ。


5人くらいの男達に囲まれた兄は、さらに殴られたのか身動きの取れない状態になっていた。