「なんだ、マジかよ」
「譲ってもらおうと思ったのに、な。
──それだけ可愛いなら、勝てそうだ」
勝つ?
何に……?
長髪の男が口にした言葉に、私は首を傾げる。
──それよりも。
どうして海里の手が私に繋がれてるの?
「飽きたら貸せよ?」
「山吹さんに紹介するからさ」
その声を背中に浴びながら、海里は私の手を引いて歩き出す。
二人組の男達も、興味を失ったように去っていった。
「ねえ……今の、誰だったの?」
しばらくして、繋いでいた手が放され、海里は無表情に私を見下ろした。
「あいつらは、俺達と敵対している。如月さんの女だから、あんたもこれから狙われやすくなるかもな。気をつけろよ」
「敵対? 同じ学校なのに?」
訊き返すけれど、海里はそれ以上何も答えてくれなかった。
私の手には、彼に柔らかく握られていた感覚が、まだ残っていた。



