「海里君もずっとあの調子だし」


春馬は窓際で頬杖をつき、たそがれている海里へ視線を向けた。


「こんなはずじゃなかったんだけどな」

「そうね。龍臣の幸せのため、と思っていたのに。一体どういうこと……?」

「きっと、そのうち忘れられる時が来るよね。優希奈さんも案外、蒼生高で楽しく暮らしてるかもよ」


自分はすぐに立ち直れると言いたげに、春馬は周囲に言い聞かせた。


「春馬君だけ平気そうにしてるけど。私知ってるんだからね。スマホで隠し撮りしたユキの写真、切なそうに見てたこと」

「な、何のこと?」


気まずげに目をそらす春馬。


「隠し撮りじゃなくて、ちゃんと許可取ってるよ?」

「その写真、私にも送ってね」

「あ。俺も」


二人に写真を送信したあと、春馬は窓際に歩き、そこに立つ従兄へ声をかける。


「まるで、優希奈さんが来る前の“根暗”海里君に戻ってしまったみたいだね」