「冬里さん、もう優希奈には部屋を貸さないでくださいね」

「それは兄として心配だから? それとも俺の弟に先に手を出されたら困るから?」


信号待ちの際、冬里さんはからかい混じりの目で兄のことを振り返ってきた。


「……っ、兄として、放っておけないからですよ」


言葉に詰まる兄の様子を見て、冬里さんは肩を震わせ笑い始める。


「優希奈ちゃん、みんなに愛されてるね」

「……そうですか?」

「噂に聞くより可愛いし、弟や薫が惹かれるのもわかるよ」

「冬里さん。妹を口説かないでくださいよ?」

「相変わらず怖いな、薫は。そんなに睨むなよ」


冬里さんは弟である海里とクールな雰囲気は似ているけれど、彼よりもよく笑う人だった。


海里が笑ったみたいで少しドキリとする。

公園で海里が一花ちゃんを高い高いしてあげたときと同じ、柔らかな笑顔を常に出せるタイプらしい。




冬里さんの車は、高級住宅街と言われる地区に入っていき、角地に佇む豪邸の前で停車した。

白い門や広々とした庭のある、モダンと洋風がミックスされたようなデザインの家だ。