「次は何を賭けて勝負するんだ? まさか妹を取り返して終わりじゃないだろ?」

「俺はそれでもいいんですけどね。蒼生の一部が椿の姫を取り戻したがっているから。また近いうち、桜花と勝負することになるかもしれません」

「薫は俺の弟に傷をつけられるのか?」

「それは無理でも、如月龍臣を潰せば済むこと」


……潰すなんて物騒な言葉が、兄の口から出てくるなんて。

かなり引き気味に横目で見ていたら、私の視線に気づいた兄がそれはそれは優しく微笑んだ。



「いや、でも。一目見れて良かったよ」


再びバックミラーの中で冬里さんと視線が合い、私は目を瞬かせる。


「薫と弟が取り合ってる子って、どんな子か想像つかなかったからさ」

「俺も、まさか冬里さんの弟と暮らしてるなんて思いませんでしたよ。普通に危険でしょう、優希奈が」


隣で腕を組んで座る兄が、私のことを軽く睨んでくる。