「思いっきり疑われてますね、俺。こんなことなら桜花との勝負、わざと負けた方が良かったかな」


肩をすくめた影島は、私の方をちらりと見た。

兄は私の手首を掴み、かばうようにその背に隠す。


「仲がよろしいことで」


鋭い目つきのまま笑った影島は私達の横を通り過ぎ、ふと立ち止まる。


「そういえば相原さん? アンタ、大事な妹に隠してることがあるとか。それを知っても妹は、変わらずそばにいてくれるんでしょうかね」


肩を揺らし笑いながら、影島は門の外へ消えていった。


私の手首を掴む兄の手に、一瞬強い力が込められる。


兄は私のことを寂しげに見つめたあと、門の方へ歩き出した。