咄嗟に手をつき顔から落ちるのは防いだが、激しい痛みが遅れてやってくる。
「優希奈!?」
兄の声が聞こえても、痛みのせいで起き上がることができず、しばらくそのままでいた。
足を引っ掛けてきた人はどこかに行ってしまったようで、すでに姿は見えなかった。
*
階段から落ちて軽い打ち身をした私は、兄にお姫さま抱っこをされ廊下を進んでいた。
すれ違う生徒達の視線を感じて恥ずかしく思うのに、彼は全然気にしていない。
運び込まれたのは生徒会室。
部屋の中には誰もいなかった。私と生徒会長の彼だけ。
「ごめん。いつでも守ると言った矢先に、こんな怪我をさせてしまった」
お姫さま抱っこをしたままソファに座った彼は、私の手のひらを取る。
そして、すり傷やアザを見つけると、キスをするかのように唇で優しく触れていった。
「お兄ちゃん……血が繋がってないからって、こんなことしたらダメ」
彼の膝に座らされた状態の私は、恥ずかしさに顔を火照らせながらうつむく。
「こんなに可愛いのに、我慢しないといけないの?
……世間の目は残酷だな」
憂い顔の兄はそう言い捨て、そっと溜め息をついた。



