咄嗟に手をつき顔から落ちるのは防いだが、激しい痛みが遅れてやってくる。


「優希奈!?」


兄の声が聞こえても、痛みのせいで起き上がることができず、しばらくそのままでいた。


足を引っ掛けてきた人はどこかに行ってしまったようで、すでに姿は見えなかった。





階段から落ちて軽い打ち身をした私は、兄にお姫さま抱っこをされ廊下を進んでいた。

すれ違う生徒達の視線を感じて恥ずかしく思うのに、彼は全然気にしていない。



運び込まれたのは生徒会室。

部屋の中には誰もいなかった。私と生徒会長の彼だけ。


「ごめん。いつでも守ると言った矢先に、こんな怪我をさせてしまった」


お姫さま抱っこをしたままソファに座った彼は、私の手のひらを取る。


そして、すり傷やアザを見つけると、キスをするかのように唇で優しく触れていった。


「お兄ちゃん……血が繋がってないからって、こんなことしたらダメ」


彼の膝に座らされた状態の私は、恥ずかしさに顔を火照らせながらうつむく。


「こんなに可愛いのに、我慢しないといけないの?
……世間の目は残酷だな」


憂い顔の兄はそう言い捨て、そっと溜め息をついた。