広々とした食堂は一面ガラス張りで、眺めがとても良かった。
視界に広がる街並みの向こう──遥か遠くには、雪の色に染まった山脈が見える。
「……綺麗」
ビルが建ち並ぶこの景色の奥に、桜花高校がある。
そう思うと、帰りたくて仕方がなくなった。
絵瑠ちゃん、どうしてるかな。
理希も、せっかく仲良くなれたばかりだったのに、もっといろんな話をしておけば良かった。
海里にリクエストされたカニクリームコロッケ、昨日は少し焦げて形も歪んでしまったから、また作り直したかった……。
みんなの声が聞きたくても、私のスマホは兄に預けられているので使えない。
桜花と連絡を取れないようにしているのだと思う。
「寂しそうな顔だね……桜花に帰りたい? 優希奈には、俺のせいで辛い思いばかりさせているな」
隣に並んだ兄は、ガラスの向こうの景色へ目を向け、苦しそうにゆっくりと続けた。
「この前。あの人が一部、認めたよ。優希奈に辛く当たっていたことを」
「本当……?」
母が、私にしたことを認めた……?



