蒼生高の校舎は、旧校舎と違って、まだ建てられて間もないため意外と明るい雰囲気だった。
部活のため学校に来ている生徒達と廊下ですれ違い、男子校なので女子が珍しいせいかジロジロと不躾な視線を浴びた。
「そういえば……。蒼生高は引き分けで椿の姫を失ったけど、大丈夫なの? 悔しくないの、薫兄さん」
兄の手が私の左手にしっかりと繋がれているのを気にしながらも、穏やかな横顔へ聞いてみる。
影島は椿の姫も桜花の姫も、両方手に入れたいと言っていたはずだ。
これからまた取り返すつもりなのだろうか。
「勝負に勝てなかったのは悔しいけど、俺は優希奈を取り戻すのが目的だったから、椿の姫を奪われたことについては何も後悔してないよ」
柔らかく私の手を握り直し、兄は答えた。
「蒼生高は簡単に椿の姫と手を組んだみたいだったよね。どうやって手に入れたの?」
「気になる?」
首を傾け、兄は薄く笑った。
さらりと茶褐色の髪が揺れる。



