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優希奈が蒼生高のものになった瞬間。


ケイは身をひるがえし、目尻に溜まった涙を指で払った。

太陽の光で反射する涙が、真っ白な雪へと落ちていく。


「ごめんね、ユキ……」




桜花が旧校舎を去ったあと、切れた唇の端を親指で拭った春馬は、最後尾を歩く海里へ声をかける。


「いいの? 優希奈さん、もう戻って来ないんだよ?」

「俺は……仲間の方が大事だ。如月龍臣を裏切ることはできない」


ほんのわずか、雪を見つめる瞳が揺れたが、次の瞬間には冷たく閉ざされ、彼の本心は窺い知ることができなかった。