私を受け取った兄が、もう離さないとでも言いたげに片腕で抱き寄せる。


すると東側へ桜花、西側へ蒼生と、皆が一斉に線を引いたように分かれた。


ケイも私から離れ、椿の姫を手に入れた如月先輩のそばへ移動している。


西階段から上がってきた春馬君や理希達の姿も見え、大きな怪我はなさそうで安堵する。


けれど──。


今この瞬間、桜花ではなく蒼生のものになった私へ、凍りついた眼差しの海里は、別れの言葉をくれることはなかった。


全ては如月先輩のために……。


春馬君も。ケイでさえも、表情の読めない冷えきった目をしている。


理希は何か言いたげに口を開いたものの、すぐに唇を噛みしめ顔をそむけた。




海里は私よりも、仲間を選んだ。


いつ終わるかもわからない不安定な恋心より、強い絆で結ばれている友情を取った。


仲間のためなら、大切な何かを失うことになってもかまわない、と言っていたのだから。