「それがどうかした? 優希奈は血が繋がっていなくても、俺の大切な妹ということに変わりはないよ」
「フン、どうだか」
鼻で嗤う如月先輩は、今日は眼鏡を外していた。
髪もワックスで整えられ、いつもの真面目な雰囲気はない。
ケイも黒いロングコートの中は白シャツにグレーのパンツという男物の私服で、女っぽさは消している。
ノーメイクなのにも関わらず、線の細い綺麗な顔立ちは健在だった。
「血が繋がっていないのをいいことに、優希奈を自分のものにしようとしているという噂を聞いたが?」
どこか挑発するように如月先輩が訊ねる。
兄は否定せす、妖艶に微笑んだ。
「俺は優希奈が男の部屋に泊まっていると聞いたよ。兄としては心配で、迎えに行くことにしたんだ」
「……なるほどな。家出ぐらいでここまで過保護だと、優希奈が誰とも付き合ったことがないというのもうなずける」
小馬鹿にした様子で如月先輩は腕を組んでいた。
それに対し兄は、特に気を悪くした感じもなく微笑みを絶やさない。



