「仲間ではないよ。影島のチームとは敵対している。今はただ、一時的に休戦しているだけなんだ」

「休戦……?」


聞き返したそのとき、窓の外の雪が降り止んだのを合図にしたかのように、勝負が始まった。

この古びた旧校舎は1階から全て吹き抜けになっていて、男達の声や激しく争う音がこの4階まで届く。

時折、階下からうめき声までもが聞こえてきて、桜花と蒼生、どちらのものなのか心配で耳をふさぎたくなった。


「ケイ……。みんな、大丈夫かな」

震える声が廊下へ密かに響く。

「大丈夫。あの子達はケンカ慣れしてるから。ちょっとくらいの怪我なら何ともないよ」

吹き抜けの下へ視線を落としたケイは、優しく私の前髪を撫でた。


「二人はずいぶんと仲が良いみたいだね」


うっすらと微笑み、兄がこちらへ一歩近づいた。

茶褐色の前髪の隙間から覗く目は全然笑っていなかったので、私は一歩後ずさる。


「蒼生の生徒会長さんは、姫に嫉妬ですか?」

如月先輩が面白そうに喉の奧で笑う。

「兄妹とはいえ、血は繋がっていないとか……」