鋭い視線を放つ男達の一番奥にいたのは椿の姫で。
以前見たときと同じく、ただ立っているだけで、きらびやかなオーラを放っている。


その傍らに立つ、スラリとした姿勢の良い人を視界におさめたとき、私は息を呑んだ。


椿の姫にも負けないほどの、堂々とした優雅な空気を纏う人。


それは──私の兄だった。


「薫、兄さん」


海里達は知っていたのか何の動揺もなく彼らを見据えている。
知らなかったのは私だけ……。


蒼生のトップは影島のように“冷酷で、なおかつ残虐”だと噂で聞いていたはず。

しかも兄は影島と『仲間ではない』と、はっきり言ってたのに。


「蒼生高は、生徒会長イコール、蒼生のトップだから」

戸惑う私へ、春馬君が小声で教えてくれる。


私の姿に気づいたのか、兄は私の方へ向けて淡く微笑んだ。


一見、影島達とは違い、不良には見えない。
いつもと変わらない優しげな雰囲気だった。


「さて。早速始めようか」


影島が背筋も凍る不気味な視線を私へ投げたあと、この戦いのルールを告げ始めた。