「海里君の兄貴──冬里君は。過去に蒼生高のトップの座についてたんだよ」

如月先輩のそばを離れてこちらへ来た春馬君が私へ補足説明をしてくれる。


「桜花ではなくて、蒼生高?」

「そう。冬里君とは別の桜花に入った海里君は、やっかみや冬里君への復讐のために、他校の生徒だけでなく自分の高校の人間にまで狙われる毎日で。そんなとき龍臣が助けてくれたんだ。海里君の強さをかって、桜花のチームに引き入れた」


遠い目をした海里は、春馬君の言葉を引き継ぎ、口を開いた。


「俺の居場所は如月さんが作ってくれたんだ。だから如月さんの望むことなら、仲間のために──何でもする。たとえ自分の大切な何かを失うことになったとしても」


自分の幸せより、如月先輩を優先するということ?

それって何だか悲しい。
例えば。私の存在よりも先輩との約束が大切だと言っているようなものだから。



旧校舎の端から階段を上り、一番上の階、4階へ着いたとき。

中央のロビーのような場所で待ち構える人影がいくつもあり、緊張が走る。


「ようやくご到着か」


口元は笑っているのに冷たい眼差しをした影島が桜花を出迎えるように前へ出た。