「……やっぱり、駄目だな」


名残惜しく唇を離し、海里は低く囁く。


「もうこれ以上、耐える自信ない」


切なく瞳を揺らし、無理やり私から引き剥がすように視線をそらした。


「優希奈、今日は部屋の鍵を閉めてから寝ろよ?」


間違って俺が部屋に入らないように、と付け足された言葉の意味を理解し、頬が一瞬にして熱くなる。


「う、うん。わかった」

「……おやすみ」


いつもと違う甘い響きの含まれた声。


そばでもっと聞いていたいけれど、如月先輩との約束を守るためだから、と心に鍵をかける。


海里は自分の部屋の扉に手をかけ、体を滑り込ませる。


「……おやすみなさい」


扉が閉まり、私はそっと自分の唇に触れた。

彼からもらった温もりが消えないうちに。