兄は中学のときからそう。
毎回、私に近寄ってくる男子を穏やかに蹴散らしてしまうのが恒例行事みたいなもので。
だから私は、誰とも付き合ったことがない。


「優希奈を返してもらう、って宣戦布告してきた」

「やっぱり……」

「兄貴のことが好きなのか?」

「ん?」


ちょうど、焼き立てのピザを口に頬張ったばかりだったので急には喋れない。

私が兄のことを好き?

どうしてそんな疑問が出てくるのだろう。


「兄は大切な人だよ。……でも家族としてしか見てない」

「そうなのか……? けど、向こうは違うだろ」

「薫兄さん、他にも何か言ってきたの?」

「……いや、別に」


なぜか言葉を濁し、海里はパスタを口に運び始める。


「お兄ちゃん、また邪魔するの……?」


私の小さなつぶやきは海里には届かなかった。