こんな風に、登下校や近所のスーパーへ買物に行く以外で、海里と二人きりで歩いたことはないかもしれない。

冷たい風が吹くたび、海里のつけている香水のほのかな香りも漂ってくるし。
なんだか本当にデートみたいで、今さらドキドキと心拍数が速くなっていく。


海里はこの状況をどう思っているんだろう。

横顔を見上げても、いつものクールな目つきで全然読み取れなくて。

少しくらいドキドキしていればいいのに、と勝手な願いを頭の隅に浮かべてしまう。


キュッと手のひらに力を込めたら、驚いたように私を見下ろしてきて。

向こうも私と同じくらいの力を入れてきたので、照れくさくなって思わず笑顔をこぼした。

そのまま海里と見つめ合う形でいたら、スッと彼の方から視線をそらす。


「いつもと顔違う。なんで?」

「……あ。ケイからもらったリップ、つけてきたからかも」


今日はイヴだし特別、と思って。普段はしないアイカラーとチークをうっすらと塗ってみたのだった。


「他の男からもらった物、つけてきたのか」

拗ねたような雰囲気を声音ににじませ、私を軽く睨む。


「他の男って……ケイは男も女も関係なく、友達だよ?」