ケイの腕の中から離れたとき、ソファの上にいる海里と目が合って、すぐにそらされてしまった。
抱き合っているところを見られるなんて、少し気まずい。
でも、どうしてケイは海里に許可を取ったんだろう。
私はもう如月先輩の彼女という立場ではないから、自由なはずだった。
「海里さー。お前が『彼女は必要ない』って言ってるのって。もしかして、あれが原因?」
ソファの後ろに回った理希が、背もたれの上に手をつき海里を見下ろす。
「昔、冬里さんが彼女を人質に取られたから? 弱みを作りたくないってこと?」
冬里さん……。
確か、海里のお兄さんの名前だ。
「まあ、それも少しはあるかもな」
海里はソファに身を沈め、遠い目をして答える。
「けど、今はそれより、如月さんのために動くのが第一優先だから」
「……そっか」
今は彼女どころではないということだろうか。
どこかでそんな気はしていたけれど、実際に聞くと傷ついてしまう自分がいた。
だから如月先輩は私に“海里と結ばれる可能性はない”と忠告していた……?



