「海里君、椿の姫に喰われそうになってて危なかったね。見ててヒヤヒヤしたよ」


全然ヒヤヒヤしていたようには見えない意地悪な笑顔で、春馬君は私の右隣に立った。

左隣にはケイが現れ、どこか安心したように微笑む。


「ユキ。もしクリスマスの約束を取りつけられなかったら、私達と過ごしましょうね。だから安心して彼に伝えてくるのよ?」

「ケイ……ありがとう」

「それか、伝える勇気が出ないなら。いっそのこと24日の夜は俺と二人だけで逢おうよ?」


普段より低く声を落とした春馬君が、さりげなく手袋越しに私と手を繋いでくる。


「もう龍臣のじゃないから、いいよね?」

「はぁ? 春馬お前、何、抜け駆けしてんの?」


突然割り込んできた理希が顔をしかめている。


「理希さん。悪いけど、優希奈さんの弟ポジションは譲らないから」


弟?
いつから春馬君、私の弟枠に?

睨み合う二人の間に、目には見えない火花が散った気がした。


「へえ……弟、ねえ。
優希奈ちゃん、春馬より俺と一緒に過ごしてくれるよな?」

「えっ」


私はどう返事をしたらいいものか言葉に詰まる。
理希の誘いなら、無下には断れないし……。