「ねえ、昨日って私、ソファで寝ちゃった?」


朝になり、ダイニングテーブルで珈琲を飲む海里に問いかける。

すると彼は不自然に目をそらしてきたので、何かあったのかと、かなり焦って身を乗り出した。


「え……? 私、何かした?」

「覚えてないのか?」


逆に不思議そうに訊かれ、眉を寄せて思い返す。

朝起きると、当たり前のようにベッドの中だった。
ソファでうとうとして、そのあとどうやって自分の部屋に戻ったのだろう。

覚えているのは、夢の中の幸せな出来事だけ。


「海里って、夢の中では優しいね」

「……っ!?」


飲んでいた珈琲がむせたのか、激しく咳き込み始めた。


「大丈夫?」

背中をさすってあげると、びくりと海里の体が揺れた。


「あのね。夢の中で海里、私をお姫さま抱っこして運んでくれたり、布団を肩までかけてくれたり、頭を撫でてくれたり、とにかく優しかったの」

「…………」


私が追加するたびに、徐々に赤みが増していく海里の頬。


さすがに手の甲にキスされたことは、たとえ夢の中とはいえ、恥ずかしくて明かせなかったけれど。