可愛い女子に呼ばれたというのに、海里は全く立ち上がろうとしなかった。


見かねた海里の友人達が「行ってやれよ」と促している。

仕方なく、億劫そうに立ち上がり教室を出て行く海里。


もしかして告白?
だとしたら、海里は受けるのかな。
スタイルが良くて華やかな子達だったし。

想像すると胸が痛かった。


ふと、後ろの席から背中をつつかれ、振り返ると絵瑠(える)ちゃんが意味深に笑っていた。


「クリスマスの前だから、みんな告白しようとしてるのかな。佐々木君て近寄りがたくて怖そうだけど、見た目は格好いいもんね」

「……うん」

「いいなぁ、私も彼氏欲しい」


絵瑠ちゃんはうっとり溜め息をつく。


「優希奈はいいよね、イヴは如月先輩と過ごすんでしょ?」

「えっ、それはないよ。彼女といっても私はただのお飾りだし」


私は仲の良い友達には、さらっと事情を話していた。

海里達と一緒に登下校している理由や、如月先輩の正体も。


「なんだ、そっかぁ。でも、私も誰かに守られてみたいなー。ほんとの彼女じゃないかもしれないけど、優希奈はすごく貴重な体験をしてるんだよ? 大事にしないとね」

「うん……そうだよね」

「ちょっと私、佐々木君の様子を見て来ようかな。優希奈も行こ」


絵瑠ちゃんは私の手首を引っ張り、廊下へ出て海里達のあとを追いかけた。