今日は早朝から雪が降っていた。


教室での海里を、以前よりももっと気になり始めたのは、彼に抱きしめられた日からで。

気がつけば目で追っていて、誰かにそれを知られたら恥ずかしいからと、無理に視線を外したりしていた。



授業中は寝ているのかなと思いきや、意外と真面目に数学の先生の話を聞いてノートをとっている。


「じゃあ、佐々木。この問題、解いて」


20代後半で生徒に人気のある林先生に当てられた海里は、黒板にスラスラと数式を書いていく。

読みやすい整った文字だった。


「佐々木さぁ。やればできるんだから、その服装、何とかしろよ?」

「……はい」


海里は指定のシャツではなく、トレードマークのような青いシャツだったし、ネクタイも締めていないので先生に目をつけられていた。


彼が席に戻るとき、目が合ってしまい慌てて下を向く。


私と海里は、教室ではほとんど他人だった。




休み時間。

海里は明らかに校則違反で派手な服装をした4、5人と一緒にいて、何か深刻な話をしている。

休み時間だというのに、彼のグループだけ全然笑顔がない。

時折、こちらへ視線を感じるのは気のせいだろうか。



そんなとき、隣のクラスの子が二人顔を出し、海里の名前を呼んだ。


「佐々木君。ちょっと話があるんだよね。来てくれる?」