「だからさ、なんで俺がそいつを好きみたいな前提になってる? 誰もそんなこと言った覚えはないし」
軽くイラついた口調で海里は言う。
彼の“好き”という言葉に過剰に反応して、私の頬に熱が集まってきた。
「海里の態度を見てたらわかるじゃない。龍臣も内心気づいているんじゃないかしら。自分以上にユキのことを大切に想ってるって」
一瞬立ち止まった海里はケイのことを横目で睨んだだけで、否定はせずにまた歩き出す。
私は少しホッとしていた。
はっきり“好きじゃない”と否定されていたら、傷ついていたと思うから。
「ケイ……、あんまり海里のこと、からかわない方が……」
どんどん海里の機嫌が悪くなっている気がする。
「からかっているわけじゃないの。ただ心配してるだけ」
ケイは整った眉を下げ、切なそうに微笑んだ。
本屋に寄ってから帰りたいという私の我が儘を聞いてもらい、見知らぬ公園の前を通りかかったとき。
春馬君らしき姿を見つけ、思わず立ち止まる。



