「ただ……如月さんが欲しがるなら、どんな手を使ってでも手に入れる」


やけに冷たい横顔を視界に入れながら、私はショックを受けていた。


じゃあ、私はいつか要らなくなるの?
誰にも必要とされなくなる日が来るの?


例えば、如月先輩が椿の姫を気に入ったら。
桜花に姫は二人も要らない……。

私はまた、捨てられてしまうのだろうか。
あの吹雪の日のように。



「どうした?」

突然暗くなったことに気づいたのか、海里が私の顔を覗き込む。


「何でもない……」

「そんな不安そうな顔するなよ、いざとなったら俺が守るし、もしあんたが居なくなったとしても連れ戻すから」


私の頭に軽く手を置き、冷たかった目つきをやわらげる。

じっと目を見つめて“守る”なんて言われたら、勘違いしそう。


海里がそんな風に言うのは、如月先輩の命令だから。

わかってはいるのに、無意識に期待してしまう。
命令ではなく、海里自身が私のことを大切に思っていて欲しいと。



「……やっぱり、“俺”がいるとお邪魔かな」


背後から低い声で話しかけられ、パッと海里から離れる。