はあ。

なにが嬉しくて俺は

家出少女の世話をしなきゃならねーんだ?


「……まあ。幻の頼みだしな」


あいつが俺たちに頼みごとするなんて滅多とない。

それも私情をチームに絡めてきたのは……

俺の知る限りでは、今回が初めてだ。


「これだけありゃ十分だろう……?」


新しい歯ブラシ。新しいタオル。

レディースサイズのスウェット上下。

……下着。

そして、新しい布団。


言われてすぐに準備した割には上出来だろう。


足りないものは朝になってから買い出しに行ってもらえばいいとして、その買い出しに誰が付き合う?


幻は夕方まで仕事あるし俺は学校だ。

燐は、ふらふらしてっからどこにいるかサッパリ。


ハゲかヒゲあたりだと安心か?


さっき幻に電話入れたから、じきにあの子をここに送り届けるはずだ。


【こいつは俺のだ】


あのとき、幻は

あからさまに燐と少女が手を合わせるのを嫌がった。


独占欲剥き出し。


(……本気であの子を?)


オートロックつきの高層マンション。

たしかに俺の家はセキュリティ面では悪くないが。


「まさか幻の女を置くことになるとはな」


先が思いやられるのは俺だけだろうか。