「当時はシッポ振るどころか、わかりすいくらい牙を向けてきた。隔意をもち、誰の言葉にも従わず、一度や二度飯を奢った程度で心なんて通わせられるわけもなく。そこでやめておく選択肢もあった。だが、俺は燐と関わることをやめなかった」
――総長さんから近づいたの?
「意外か?」
心を見透かすように、問いかけられる。
「はい……。わたしから見た燐さんは、なんていうか子犬みたいな。なつっこい人というイメージが強いです」
だから燐さんから総長さんに近づくところは想像できても、その逆は想像がつかない。
「燐は犬に見えて完全に猫だ」
猫といえばツンっと気高くて
それでいて飼い主にだけは甘えるという印象があるけれど。
果たしてそういうことだろうか。
「燐は変わった。俺に巻かれる意を示してからは、マナーを学び、多くの知恵をつけた。元々頭も良ければ要領も良いやつだ。みるみる人間らしくなっていった。呑み込みがはやいからあの年で一人でも生きてこれたのだろう。ズバ抜けて広い人脈を持つ、品格と社交性のある男へと変わっていった」


