総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)



「……え?」


顔をあげる、夕烏。


夕烏の目にほんのり色が灯る。


「ほんとー? ユウちゃんがボクたちの姫?」

「なっ……正気かよ、幻」

「よかったね、ユウちゃん」

「は、はい」


燐が夕烏にハイタッチを求めた、そのとき。


「勘違いすんな、燐」


頭で考えるより先に身体が動いていた。


夕烏の細い腕を掴み自分の元へと抱き寄せ、燐の腕をはらう。


「こいつは俺のだ」

「……幻の?」


そうだ。


チームみんなの所有物《モノ》なんかじゃなく。



――俺のものだ。



顔を見合わせる、愁と燐。

ざわつく仲間たち。


腕の中であたふたする、夕烏。


「あの……ちょっと……苦しい、です」

「ああ。わりい」


水面に顔を出したイルカのような夕烏が、俺の腕の中から現れる。


どうしてこんなに心がざわつく。


どうしてこんなに胸の奥がくすぐられる。


どうして手放したくないと思う。


どうして、独占したくなる――…?


「あの、総長さん」

「……なんだ」

「それって。総長さんのおうちに居候させてもらえるということでしょうか」


(俺のうちに、夕烏が?)


【家事全般とくいです!】


――おかえりなさい、総長さん!


帰ると夕烏が出迎えてくれるのか。


――今日は肉じゃが作りました!


夕烏の手料理を食えるのか。


――お洗濯とお掃除、バッチリです。


夕烏が俺の部屋を清潔に保ち、シャツにアイロンをかけてくれるのか。


――あの、総長さん。……お背中お流ししますね?


俺の背中を、夕烏が。


――ああ、床なんかで寝ないでください。わたしが床で……! それか、あの、総長さんが良ければなんですけど。……いっしょにベッド使いませんか?


同じ布団で朝まで?


――総長さん、おやすみなさい。


(……いや寝れるかよ)


「ど、どうした幻。食い終わったパピコ地面に叩きつけて」


夕烏をうちに寝泊まりさせるなんてあり得ねえ。


「無理だな」


ゴミを拾い、ゴミ箱へとシュートをきめる。


「そ、そうですよね。厚かましいこと言ってすみません。公園のダンボールハウスでも、ベンチの上でも、眠る覚悟はできてます!」


そうじゃねえんだ。


別に厚かましくなんざねえ。

世話になりたがったことは、問題にしていない。


頼ればいい。

俺を。


――他の誰でもない俺を。


俺がお前の望みを叶えてやろう。


住む場所の確保。

生活の保障。

そして――、勤め先の紹介。


「面倒見ると言ったそばからわりいな。でもうちは狭えし。風呂もトイレも協同で、セキュリティも甘い」


環境を整える必要がある。