「……え?」
顔をあげる、夕烏。
夕烏の目にほんのり色が灯る。
「ほんとー? ユウちゃんがボクたちの姫?」
「なっ……正気かよ、幻」
「よかったね、ユウちゃん」
「は、はい」
燐が夕烏にハイタッチを求めた、そのとき。
「勘違いすんな、燐」
頭で考えるより先に身体が動いていた。
夕烏の細い腕を掴み自分の元へと抱き寄せ、燐の腕をはらう。
「こいつは俺のだ」
「……幻の?」
そうだ。
チームみんなの所有物《モノ》なんかじゃなく。
――俺のものだ。
顔を見合わせる、愁と燐。
ざわつく仲間たち。
腕の中であたふたする、夕烏。
「あの……ちょっと……苦しい、です」
「ああ。わりい」
水面に顔を出したイルカのような夕烏が、俺の腕の中から現れる。
どうしてこんなに心がざわつく。
どうしてこんなに胸の奥がくすぐられる。
どうして手放したくないと思う。
どうして、独占したくなる――…?
「あの、総長さん」
「……なんだ」
「それって。総長さんのおうちに居候させてもらえるということでしょうか」
(俺のうちに、夕烏が?)
【家事全般とくいです!】
――おかえりなさい、総長さん!
帰ると夕烏が出迎えてくれるのか。
――今日は肉じゃが作りました!
夕烏の手料理を食えるのか。
――お洗濯とお掃除、バッチリです。
夕烏が俺の部屋を清潔に保ち、シャツにアイロンをかけてくれるのか。
――あの、総長さん。……お背中お流ししますね?
俺の背中を、夕烏が。
――ああ、床なんかで寝ないでください。わたしが床で……! それか、あの、総長さんが良ければなんですけど。……いっしょにベッド使いませんか?
同じ布団で朝まで?
――総長さん、おやすみなさい。
(……いや寝れるかよ)
「ど、どうした幻。食い終わったパピコ地面に叩きつけて」
夕烏をうちに寝泊まりさせるなんてあり得ねえ。
「無理だな」
ゴミを拾い、ゴミ箱へとシュートをきめる。
「そ、そうですよね。厚かましいこと言ってすみません。公園のダンボールハウスでも、ベンチの上でも、眠る覚悟はできてます!」
そうじゃねえんだ。
別に厚かましくなんざねえ。
世話になりたがったことは、問題にしていない。
頼ればいい。
俺を。
――他の誰でもない俺を。
俺がお前の望みを叶えてやろう。
住む場所の確保。
生活の保障。
そして――、勤め先の紹介。
「面倒見ると言ったそばからわりいな。でもうちは狭えし。風呂もトイレも協同で、セキュリティも甘い」
環境を整える必要がある。


