……ええい、

燐のアホが余計なことしやがったせいだ。


本来ならこの子と会話することさえなかっただろうに。


燐がどこからか知らねーがこの子を拾ってきやがったせいで、こんなモヤモヤした気持ちにさせられるハメになった。


ほんと疫病神かよ。この銀髪は……。


お願いだから、俺の心のオアシスを荒らすな。

俺はここにいられるときしか。

こいつらと走ってるときしか、生きた心地がしねーんだよ。


「申し訳ないが。……誤魔化しても仕方ないのでハッキリ言わせてもらう。君の居場所は、ここには――」

「愁は黙っててくれないかなあ」

「……なんだと?」

「ボク、幻に意見を聞いてるんだ」


――いい加減にしろ。


せっかく俺が説得しているのに。

話をややこしくするな。


これ以上無駄な期待をさせるのは具合が悪い。

 
俺たちがこの子にしてあげられることなんて、なにもないんだ。


だいたい、幻が頭を縦に振るわけがねえだろ。


そんな身元もわからない少女よこされて、はいそうですかって二つ返事で引き取れるかよ。


「聞くまでもない」


幻が愛するのはバイク。

信用するのは、俺たち仲間。


他になにが必要だっていうんだよ。


要らないと。そう言われておしまいだ。 


「姫は必要ない。そうだよな、幻?」