「掃除も、お洗濯も。アイロンがけもやります!」

「そういう問題じゃない」

「へ?」


心を鬼にして。

今は、この子を追い払うのみ。


「君が燐からどんな説明受けたかは知らないが。姫とかそういうの、うちでは募集してないんだ」

「えっ……」


目を大きく開くその子が、俺の言葉にひどく動揺したのが伝わってきた。


流されたわけじゃなく

よほど期待して

よほどの覚悟を決めて

少女は、ここにやって来たというのか……?


いや、そもそもに

君くらいの年のお嬢さんが家を離れる理由。


それは一体なんなんだ――?


「そう、ですか。ここに居させてはもらえないんですね」


そういって、少女は、笑った。


てっきり悲しませると。

泣かせてしまうかと、思ったのに。


彼女は、俺に向かって笑ってみせた。


安堵したわけじゃ……ないだろう。

さっきまでは、ここに居たがっていたのだから。


だったらなぜ。


まさか。俺に気を使っているのか?


――罪悪感が芽生える。


別に俺はこの子を傷つけたいわけじゃない。