ぼーっとしている場合じゃない。


店前に出ようとした。そのとき。


「――ユウちゃんは、ここにいなさい」


スミレさんに手を掴まれ、引き止められた。


「でも……」


透明のガラス越しにサトルさんと不良が見える。

不良の一人が、わたしに気づいた。


「おい。あいつじゃね?」


――?


相手の男たちが、こっちを見てなにか反応している。


(やっぱり、わたしが狙い……?)


そう考えるとゾクッと背筋が凍りつく。

狙われると忠告されていたとはいえ、実際に狙われるとこうも恐怖するのだと知る。


「店には一歩も入れねえよ」


不良の前に、サトルさんが立ちはだかる。


「サトルのおバカ」


(スミレさん?)


「いま揉め事起こしたらマズイわ」

「え……」


今はお店の営業中だ。

店前で暴れられたら、困る。


だけど。


スミレさんは、それ以外の理由でもサトルさんが戦うとマズイような言い方をしている……?


「あたしがなんとかする。だからサトルが戻ってきたら、ユウちゃん引き止めておいてちょうだい」

「そ、そんな。無茶です。スミレさんがあんな人たちを相手にするなんて……」

「大丈夫よ」

「で、でも」