愁は、ほんとわかりやすい。


隠れて不良やってても、根は真面目だ。


全体的に冷静な判断はできるけど、ところどころ感情的で、情が深く純粋なやつ。


損得勘定で動く打算的なオレとは真逆。


一方、どんなときも揺るがない幻。


総長様が取り乱すところの一つでも見てみたいものだけど。


そんなことってあるのかな。


ここに乗り込んで来たのが、さっきみたいなザコじゃなければ面白いもの見れたかも。


いっそ、こわーいオトナの女にでも手を出すか

仲間を傷つけでもすれば、きっと――。


「燐」

「なーに、幻」

「ヘンな真似してみろ。即刻追放する」


――ああ、それは一番イヤだなあ。


まだ、幻といたい。

この先のことなんて未定だけど。


今はここで幻の飼い猫になっていたい。


「わかってるよー」


幻は、笑ったり泣いたりしないのかな。

その表情崩してみたいなー。


「そういえば、幻。このチームには姫がいないよね」

「……姫?」

「そうそう。お姫様」

「なんだそれは」

「その名の通り、チームの姫的存在。あるいは女神的。または、マスコットキャラクター的なものさ」

「いらねえな、そんなものは」