「いちゃつくなら自分の家でいちゃつけ」
愁さんが向かい側のソファにドスっと座る。
さっき洗面所の方へ向かっていたと思ったら次に現れたときにはオールバックになっていた。
それが愁さんの夜の姿、だもんね。
「出ねえのか?」
「行くさ。行くけどな。俺がいない間にうちで……その……」
愁さんは咳払いすると、
「節度のある付き合いをしろよ。ユウはまだ15なんだから」
視線を外し、つぶやいた。
幻さんがそんな愁さんを見て微かに笑う。
「はやくも兄貴が板についてきやがったな」
「なっ……俺はただ、当たり前のことを言ったまでだ」
「わるいが俺に節度なんてねえよ。家でやれだと? お前の目がなきゃ、なにをしてしまうか……わかんねえな」
(げ、幻さん……!?)
真顔でなにいってるんですか。
わたしに、なにするつもりですか……!?
愁さんが軽く蒸せたあと、
「……知ってた」と、つぶやく。
「夕烏がこんなに近くにいて可愛がらない方が難しい」
だから真顔でそんなこと言わないでください。
「もうノーコメントでいくわ」
「お前だってそうだろう。こいつが可愛いからタバコを辞めた。違うか?」
――!
「気づいていたのか」
「捨てちまうなんてな」
「……目ざといじゃねーか、幻」
ゴミ箱に捨てられているのを見て気づいたみたい。
まあ、小さなものじゃないし未開封のタバコがポンと捨てられていたら不思議に思うよね。


