見知らぬ町どころか地元でさえろくに土地勘のない(出歩かせてもらえなかったから。その割には渋谷の街合わせ場所に一人で向かえたから方向音痴ではないと思う)わたしにとって大助かりな機能だ。


「インターネットに……繋がるんですよね」

「そうだ」


つまり

これがあれば、知らないことをたくさん知ることができる。


いつか、学校の授業でネットの世界には危険が多いと習った。


どこにどんな罠が仕掛けてあるか、一見わかりにくい場合もある。


書いてあることを鵜呑みにしてはならないし、顔の知らない人と文字だけで話すことは顔見知りと対面して話すのとはわけが違ってくる。


便利なものであり、危ないものでもある。


それに――。


『拡散しちゃってもいいの?』

『嫌なら言うこと聞けよー』


……武器にさえなりえる。


これ一台で、

消えない傷さえ作ることができるんだ。


「道具に頼りきるつもりはねえ。だが、肌見放さず持っていてくれれば、俺としては幾らか安心だ」

「わかりました……!」


紙袋の中には充電器と、それから――。


「……これは?」

「スマホケースだとよ」

「スマホケース?」


なんだか手帳みたいに見えたけれど、カバー的なものだったのか。


「店員にすすめられた。夕烏くらいの……女子高生は持ってるやつが多いそうだ」

「……あ。そうかもしれないです」


白地で――、すみっこに一匹のカラス。


「気に入らねえなら違うの買ってやる」

「か、かわいいです! とっても!」

「……俺もそう思った。夕烏らしいなと。ひと目見て気に入った」

「!」


カラスって、嫌われ者だと思ってた。


「知ってるか、夕烏」

「?」

「カラスってのは、非常に賢い生き物だ」