幻さんと愁さんと食卓を囲む。

同じものを、食べている。


――幸せだなあ……。


ああ、どうしよう。

さっきまでは今の幸せを維持したいなんて思っていたクセに。

多くを望んでいなかったのに。


未来が楽しみで仕方ない。


これまでできなかった、たくさんのこと。


諦めずにいてもいいんじゃないかって。


友達作りも、お洒落も、それから恋も。


したいこと、願いたいことが

この先、どんどん増えてしまいそう。


「おい。泣いてんのか」


向かい側に座っている愁さんからそう言われ、自分が涙をながしていることに気づいた。


「……あ。あれ、なんでだろう」

「まさか。口に合わなかったとか言うんじゃねーだろうな」

「そんな……! すっごく、すっごく美味しいです」

「夕烏」


隣に座る幻さんから、頭に手を乗せられる。


「ここに来てよかったな、お前」

「……はい」


ねえ、パパ、ママ。


わたしはこの夜


嬉しくて、嬉しくて


たまらなくなって


涙をたくさん流したんだよ――。