「なんでそんなことっ……」
振り返ると、まだ裸だったので慌てて再び背を向けた。
「こんくらいで照れてんのか?」
「き、着て下さいよ……!」
「やなこった。なんでお前のために俺が暑い思いしなきゃなんねーの」
なんなのこのひと。
なんなの、このひと……!?
「だいたい海とかプール行きゃもっと露出度高い男ぞろぞろいんだろ。全裸なわけじゃねーのに慌てすぎだっつの」
「そっ、そんなとこ行ったことないからわかりません」
「は?」
半裸でも直視するのは無理だよ。
「……仕方ねーな」
ゴソゴソ、と音がする。
服を着てくれたらしい。
ゆっくり、振り返った。
明るい茶色の短髪
小柄な体型
釣り気味の目と眉
……このひとが
スミレさんの、一番弟子さん――?
イメージしていたより、ずっと若い。
わたしと年が近そうに見えるが。
「と、とにかく。明日からよろしくお願いします!」
「されたくねーな」
なんでこんなに冷たいの?
「言っとくけどお前にパンの作り方教える気ねーから」
!?
「せいぜい洗い場と雑用だな。それでもいいなら来れば。来なくていいけど」
そういうと、ソファに寝転んでしまった。
(そんなあ……)