「いらっしゃいませ」
――店員さんの声に、現実に引き戻される。
店員さんの声といっても、さっき何度も聞いたたような遠くまで通る甲高い声でなく。(ああ、もしかしたら彼女たちの声が高いのはお客様を呼ぶための工夫なのかもしれないなあ)
そっと、寄り添うように話しかけられた。
顔をあげると、そこには
肩まで伸びた茶色い髪を内巻きにしている、爽やかなお姉さんがいた。
「今日はどんなものをお探しですか」
「え……っと。自分に合うもので」
「え?」
きょとんとされてから、気づく。
色や柄を伝えるべきだったと。
「……初めて自分で選ぶから。なんにもわからなくて」
「そうなんですね。それでは、サイズ測りましょうか」
にっこり微笑むと、メジャーを手に持ち
試着室へ招待された。
女性相手とはいえ、胸のサイズを調べてもらうのは恥ずかしいものがあった。
アンダー、トップをはかり
その差でカップが決まるなどと説明を受け、それからブラを選ぶことに。
「ヘン……ですかね。この年で初めて選ぶって」
みんな、もっとはやくこういうことしてそうな気がする。
「いえいえ。羨ましいです」
「え?」
「ほら私、谷間もないし、寄せるほどの肉もなくて。だいぶ遅かったですもん。自分で選ぶどころか、ブラデビューが」


