普段ならまず出歩かない夜遅くに、足を踏み入れたことのない街まで向かった。


門限ははやかったけれど、

家を抜け出すことは容易にできた。


わたしがいようがいまいが、

おばさんは気にもしていなかったから。


――指定の場所は、渋谷。


そう。これは、昨日の夜の話だ。


指示通り制服を着て行った。


そこでおかしいと気づくべきだった。


はやく手に持つ紙袋を渡したい

その一心で、わたしはそこに立っていた。


補導されてしまうのではないかとヒヤヒヤした。


けれどひと通りも多くはなく、警察のような人は見当たらなかった。


『……××さん?』


ふいに名前を呼ばれて顔をあげると、そこには――。


『聞いていたとおり。私好みの童顔だ』


……知らないオジサンが立っていた。


思わず叫びそうになった。

だけど声が、出なかった。


クスクス クスクス


あの子たちがどこかで

わたしを嘲笑っているような気がした。


嫌な予感しかしなかった。

はやくこの場を離れなきゃと思った。


『あの。これ』


紙袋を渡すと、オジサンは


『はやく使いたいの? 慌てないで』


よくわからないことを言った。


次の瞬間。


『さあ。行こうか』


オジサンが、わたしの、手首を掴んだ。