家に帰ってからは、読み込みすぎてボロボロになったコンペの資料をさらに読み込み、自分でパソコンにまとめたものをプリントアウトした。
目を通しながら、今回のことはいい勉強になったなと感じていた。

まだコンペは終わってないけれど、参加することを決めて資料を受け取った時は、ここに書いてあることの八割は理解出来ていなかったように思う。
でも今は、五割くらいは分かるようになったのだ。

まだ五割なのか、と徳田さんあたりには突っ込まれそうなところだが、やはり専門的な知識という部分においては四年目のいち事務員にはまだまだ分からないところが多くて、説明しろと言われても難しい。

茜にその話をしたら、とても驚かれた。

「えー?待って待って、私なんて二、三回しか読んでないよ!?だって私たちってただの案内係でしょ?お茶汲み要員でしょ!?」

それはまぁ、そうなんだけど。
野崎さんの件もあるし、と返すと、あんなの普通に考えたらありえないよと笑い飛ばされた。

私は心配し過ぎなのだろうか?


お風呂から上がってからは、着ていく服の準備をした。

クローゼットからブラックのシンプルなジャケットと、同じくブラックのパンツを取り出してハンガーを引っ掛けておいた。
白いブラウスも念のためもう一度アイロンをかけておく。


徳田さんにも言われたけれど、明日はとにかく足を引っ張らないようにしなければいけない。
誰の足って、それはもちろん有沢主任の……だけど。

あの告白があっても、主任はギクシャクするでもなく普通に私に接してくれていた。
もともとそんなに会話を交わすような関係でもなかったので、最低限の仕事上の会話だけ。


『コンペが終わったら一度きちんと話したいです』


そう言われたんだっけ。

…………明日のコンペの後かぁ。気が重い。

それだけが気がかりだった。