莉緒はそう言うと頭を下げて、また絵を描き始めた。




俺のスマホがまた鳴る。




『次の土曜日、空いてない?』




ほんと、勝手なやつ。




俺のこと、捨てたくせに。





「空いてない」と、メッセージを送信する。





ふと、カメラを起動して莉緒に向ける。




必死に絵を描いているからか、スマホが向けられたことに気づく様子はなかった。




カシャッ




「…か〜な〜た〜?」



「ごめんごめん、つい」



「ついじゃないの〜。消してよ」




必死に俺の手からスマホを奪おうと手を伸ばしてくる莉緒。



手を上にあげて届かないようにすると、どうにか取ろうと、俺に乗りあげてくる。



どきりと、胸が弾む。




するとまた、スマホが鳴った。



持ち上げた手を下ろして、通知を確認する。





『そっか〜、じゃあ奏多の都合のいい日教えて?



私が奏多の予定に合わせるよ』