あの時の記憶が焼き付いて、離れない。





「奏多っ、ダメっ、無理に決まってるっ」





私は無意識にそう叫ぶ。




ドクドクと鼓動が早まる音が聞こえる。




嫌な汗が流れる。





「だいじょーぶだよ」




奏多はそう言うと、走ってきた男のナイフを持った手を蹴り上げて、ナイフを地面に落とした。



そのまま、奏多は回し蹴りをかまして、その男はあっけなく倒れた。




「弱っ。まぁ、楽でいいけど」




奏多はナイフを遠くへ蹴り飛ばすと、電話をかけた。




「あ、もしもし。シュウさん、いました。かつ、倒しました」




そんな報告をしながら笑っている。




私はその笑顔を見て、安心したんだと思う。




もう、いつぶりかもわからない涙が流れた。





「へ?莉緒?



泣いてるの?



どっか痛いところでもある?」




奏多は心配そうに私の顔を覗き込んだ。