「ありがとう、海愛」





「なんか今日の蓮、甘えん坊」





「ふふ」





 静かな病室の片隅で、僕らは出会った頃のように笑い合った。





「海愛……愛してるよ」





 最期に君に伝えられてよかった。





「最期は、笑ってサヨナラしよう」





 この約束も、守れたかな。





「え? 蓮?」





 そうして僕は目を閉じた。

 医師たちが入ってくることも構わず、海愛は泣き叫んだ。





「れん、蓮! 起きてよ! 約束したじゃない! 嫌……嫌あああああ!」





 僕の体にしがみつき、海愛は声の限りに泣いていた。海愛の隣に立っていた神谷は、泣き喚く彼女を見守ることしかできなかった。



 ねえ、海愛。僕は本当に幸せだったよ。あの日、君に出会えたことを、僕は心の底から神様に感謝しよう。君が僕の人生を変えたんだよ。だから、前を向いて歩いて。君は確かに僕の生き続けるための希望だった。その役目も、もう終わり。これからは、自分のために時間を使ってくれ。



 命の灯が消えた僕の表情は、微笑んでいた。





 ねえ、海愛、笑って?





 僕の命を懸けた大恋愛は、こうして幕を閉じた。海愛は次第に冷たくなっていく僕の体から決して離れず、声を枯らして泣き続けた。